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最高裁判所第二小法廷 昭和62年(あ)455号 決定

本籍

徳島県美馬郡貞光町字東浦六五番地の一

住居

同 美馬郡貞光町字東浦六五番地

医師

北川一善

昭和三年三月二五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和六二年三月五日高松高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人森吉徳雄の上告趣意は、事実誤認、量刑誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 牧圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一 裁判官 林藤之輔)

昭和六二年(あ)第四五五号

○上告趣意書

所得税法違反 被告人 北川一善

右被告人に対する頭書被告事件の上告趣意は左記のとおりである。

昭和六二年六月一日

弁護人 森吉徳雄

最高裁判所第二小法廷 御中

一 原判決には、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められるべき刑の量定の不当があると思料するので、以下に論述する。

二 原判決は被告人の所得額並びに過少申告額につき、公訴事実と同額を認定したのであるが、この点において事実誤認があり、ひいては量刑不当の結果にもなっているものである。

三 即ち、公訴事実及び原判決によれば、被告人の所得額は三億八、三三〇万八、五四七円とされているのであるが、このうち六、〇五一万七、六四六円は被告人の所得から控除されるべきである。即ち、原審において取調べ済みの被告人が実弟藤川実に対して交付した取引精算メモと証人藤川実の証言及び被告人の供述により明らかな如く、合計六、〇五一万七、六四六円は被告人の所得ではなく、被告人の実弟藤川実の所得である。この点を無視した原判決は事実誤認の過ちを犯している。しかも、この所得額が減額になれば、これに対する所得税額も当然減額され、ひいては被告人に対する量刑も原判決よりも軽減されるべきであることは理の当然である。

四 以上の諸点から原判決を破棄するのでなければ、著しく正義に反するものと考える。

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